曽根医師インタビュー

Doctor Interview.06
逆流性食道炎やピロリ菌は、
胃がんのリスクを高めます。
内科部長・検査科部長曽根 辰巳

家族ぐるみでお越しいただける診療を目指しています

私が医師を志したのは、小児科の医師をしていた父の存在があったからです。もともと私は高校時代から教師を目指していました。実は父も数学科の教師を目指し、その後、医療の道へ入ったという経緯があったのです。父の助言を受け、私も医師を目指すようになりました。入局してからは血液内科で内視鏡の技術を学び、消化器内科を専門にして20年ほどになります。茅ヶ崎徳洲会病院では一般内科の中で、消化器内科も担当しています。私が目指しているのは、家族ぐるみでお越しいただけるような診療です。患者様と信頼関係を築き、患者様一人ひとりに合ったコミュニケーションを心掛けています。一人でも多くの患者様に頼りにしていただけるよう、日々診療に臨んでいます。

昨今では、逆流性食道炎にかかる患者様が多く見受けられます

逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流してしまう病気です。胃の粘膜は胃酸に耐えられますが、食道は胃酸に耐えることができません。胃酸が逆流することで食道の粘膜が刺激されてしまうのです。逆流性食道炎の原因は、ストレスや運動不足、アルコールや喫煙、食生活などさまざま。最近では、割と若い方も増えてきました。生活習慣や食生活だけでなく、スマートフォンを見るために屈んだり、猫背などの姿勢の悪い状態が続くと腹圧がかかり、胃酸が逆流しやすくなります。逆流性食道炎の症状としては、口の中が酸っぱくなる、胸やけ、げっぷ、食事後の胸の痛みというものが大半ですが、中には口が臭くなったり、咳が出るという症状も。胃酸が気管を刺激して咳として出てくるのですが、症状だけ見て呼吸器内科や耳鼻科へ行かれる患者様もいらっしゃいます。咳が続き、咳止めを飲んでも止まらないようでしたら、ぜひ内科を受診してください。

逆流性食道炎を治すためには胃酸を抑える薬を飲むだけでなく、日常生活で予防することが大切です。その中でも、食事の内容や仕方を見直していただきたいと思っています。例えば、「高脂肪の食事ではなく消化の良い食事を選ぶ」「決まった時間に食事をとる」「腹八分目にする」「最低でも20分かけて食べる」「食後30分はゆっくり過ごす」「夕食は軽く済ませ、寝る2時間前には食事をしない」などがポイントになります。

ピロリ菌も逆流性食道炎の原因の一つです

ピロリ菌は親から子へ口移しで食べ物を与えたり、衛生状態が悪く上下水道が整備されていない飲料水を飲むことで感染します。免疫力の弱い乳幼児期にかかることがほとんどで、ピロリ菌に感染しても症状は数十年後に出てくることが多く、内視鏡検査や呼気検査、尿や便、血液による検査などをしない限り分かりません。ピロリ菌にかかると、胃の粘膜の防御力が低下し、消化が悪くなるために胃の中に酸が停滞して、逆流性食道炎を起こすことがあります。また逆にピロリ菌を除菌することで、今まで抑えられていた胃酸が通常に分泌されるようになり、逆流性食道炎を併発することもあるため注意が必要です。

逆流性食道炎もピロリ菌も、胃がんのリスクにつながります。今はABC検診という血液検査でピロリ菌に対する抗体の有無や、胃粘膜の炎症度合いを測定する検査を通じ、胃がん発生のリスクを把握することができます。胃がん発生の危険性が高い方は頻回に検査したほうが良いですし、危険性が低い方は頻回に検査しなくても良い、という傾向が分かるのです。とはいえ、ピロリ菌がいない、または除菌したからといって胃がんにならないわけではないので、定期的に胃の検査はすべきでしょう。茅ヶ崎徳洲会病院では効率的に検査ができ、時間がかからずスムーズに進めることができます。

ノロウイルスにかかった際は、脱水にご注意ください

特に秋から冬にかけては、ノロウイルスの流行も気を付けなければいけません。何よりも“かからないこと”が大切です。予防のために手洗いとうがいはこまめに行ないましょう。万が一、ノロウイルスにかかってしまった場合は、できるだけ外出しないことが得策です。2~3日もすれば、症状も治まってくると思います。

下痢や嘔吐が続く際には、脱水に気を付けましょう。脱水は臓器障害を起こすこともあり、非常に危険です。水やお茶、ジュースは体に吸収されず外に出てしまうため、ブドウ糖が入っているスポーツドリンクや、経口補水液が効果的です。水分が取れない場合や、あまりにも症状が辛い場合は病院へ。点滴などで脱水症状を回避することができます。また家族の方がかかってしまったら、二次感染を防ぐことも重要です。素手で吐物に触るのは危険。次亜塩素酸を使って消毒するようにしてください。

ご自身で病状を診断されるより、病院を受診するほうが確実です

本やインターネットでさまざまな情報が溢れている昨今、「私はこの病気だ」と断定されて来院される患者様も増えています。病状チェックリストを見ると、不思議と自分に合っているような気がしてしまうものですよね。しかし、病院で検査されると、想定されていた病気とは異なる診断となるケースが多いです。例えば、「胃潰瘍だと思うから内視鏡で診てください」と来院された患者様が、実際は胆石や胆嚢炎だったということもあります。

また「こんな軽い症状で病院に行ってもいいのだろうか」と悩まれる方も多いのですが、病院に来たからといって必ず治療をするわけではなく、治療すべきかを判断するのも病院の役目ですので、悩まれる前に気軽にご相談ください。私たちはこれからも患者様と一緒に考え、患者様が納得のできる検査・治療を進められるように努力していきたいと考えています。

プロフィールProfile

曽根 辰巳そね たつみ
診療科 内科・検査科
専門医・認定医等 日本消化器内視鏡学会専門医、日本内科学会認定医、難病指定医