近年、医療機器・医療技術の進歩は著しいものがあります。当院では診療の充実とスタッフの教育・研修や放射線機器の高精度な運営を行い最新の機器と技術とで、皆様のお役に立ちたいと願っています。
放射線治療の分野では、画像診断の進歩とコンピュータ技術の発展に後押しされ、詳細な画像情報に基づく放射線治療 (IGRT: image guided radiation therapy)が導入されて来ています。当院では東京西徳洲会病院と連携により腫瘍描出能に優れたPETとCTとを同時に撮像するPET/CT情報を放 射線治療計画用コンピュータ(Pinnacle3)に取り込み、放射線の照射方法や照射線量を検討する"PET/CT planning"を開始いたしました(図1)。

図1. PET/CT像(腫瘍の部分が明るく光って見えます。)
この治療計画法を用いて、3次元原体放射線治療(3DCRT; three dimensional conformal radiation therapy)、強度変調放射線治療(IMRT; intensity modulated radiation therapy)、体幹部定位放射線治療(SBRT; stereotactic body radiation therapy)などを実施しています。
3次元放射線治療とは腫瘍に対し様々な方向から放射線を集中砲火的に照射することで、腫瘍への効果を高めるとともに周囲の正常組織への照射量を軽減しようとする照射法です(図2)。

図2. テトラポット型に配置された三次元4門照射法の例
しかしながら、いろいろな工夫にも関わらず腫瘍内の線量にゆがみ(不均一性)が生じたり、周囲のリスク臓器に照射される放 射線の量をうまく軽減できなかったりする場合もあります。このようなときに威力を発揮するのが強度変調放射線治療です。充分な線量を腫瘍標的に照射でき、 かつ周囲正常組織への線量を安全な程度に制限出来るように、各照射方向(通常は5-9方向)からの線量強度プロフィールを計算します(図3, 4)。

図3.線量配置を規定するための領域
(例えば赤い領域を「均等に80Gy」などと指定します)

図4. うつ伏せの体位で配置された5門照射
いわばブロック積みの設計図のようなものです。各段の設計図に合うように最下段から順番に、幾つかのパーツ(セグメント) に分けて照射を積み重ねて行きます。例えば右斜め上方から照射される青いビームに関しては、5図上のようなプロフィールが計算され、4パーツに分けて照射 されます(5図下)。

図5. 理想的な線量強度プロフィールとそれを実現するための4つのパーツ
詳細な線量分布設計図に合うように照射を組み立てて行くわけですが、従来の様な、照射法が先に決められこれが臨床の必要を 満たしているかどうかを検証する目的で線量分布図を計算する方法(forward problem)とは逆に、線量分布の設計を先に検討し、これに合致させるように照射法を計算することから逆方向(機能的)計画(inverse planning)とよばれています。
ところで正常組織に対する照射体積が小さくなれば安全性が高まること(体積効果)が知られていますので、更に精密な照射が可能ならば、比較的小さな腫瘍の場合にはこれに対する照射線量を増やすことが出来ます。この考えに基づいた方法が体幹部定位放射線治療です。
3次元座標目盛りを内蔵したフレーム(ELEKTA Body frame)に身体が安定した状態で収まるように形状を固定できるマットを敷き、必要なら横隔膜の動きを制限する装置をつけて、多方向からの照射を行いま す。これにより従来に比べ治療期間が大幅に短縮でき、おおむね1週間位で根治的な肺癌治療や肝癌治療などが可能となります。

図6. ELEKTA社ボディーフレームを用いた照射の参考例
| 総線量の目安(Gy) | 局所制御率(%) | 年生存率(%) | ||
|---|---|---|---|---|
| 脳腫瘍 | 星細胞腫(Grade1,2) | 45-55 | 70 | |
| 胚細胞腫 | 40 | 90 | 85 | |
| 頭頚部腫瘍 | 上咽頭癌T1・2 N0 | 65 | 90 | 80 |
| 舌癌 T1・2 | 70 | 90 | 80 | |
| 声門癌 T1・2 | 60 | 85 | 90 | |
| 食道癌 | Ⅰ期 | 70 | 80 | 70 |
| 肺癌 | 肺門部早期扁平上皮癌 | 60 | 95 | 85 |
| 乳癌 | 乳房温存療法 | 50- | 95 | 90 |
| 子宮頚部癌 | Ⅰ期 | 子宮頚部癌取り扱い規約 50 |
90 | |
| Ⅱ期 | 80 | |||
| Ⅲ期 | 60 | |||
| 尿路悪性腫傷 | 前立腺癌 病期A2 | 66-70 | 100 | 100 |
| 病期B | 〃 | 90 | 90 | |
| リンパ腫 | ホジキン病 | 45 | 95-100 | 90 |
| 非ホジキンリンパ腫 | 50(放・単独適応例) | 100 | 90 |
表1. 標準的な放射線治療の適応症と治療成績
放射線治療は比較的低侵襲性であることから、がんに伴う症状の緩和を目的として利用され、QOL(生活の質の改善)に役立っています。
| 1)骨痛 | 転移性骨腫瘍, … |
|---|---|
| 2)骨折予防 | 転移性骨腫瘍(特に椎骨,大腿骨), … |
| 3)神経症状 | 脊髄転移,脳転移, … |
| 4)血流障害 | 上大静脈(SVC)症候群, … |
| 5)呼吸困難 | 気道閉塞,胸水貯留, … |
| 6)管腔臓器通過障害 | 食道癌,胆管癌, … |
表2. 一般的な緩和的放射線療法の適応症
適応等については各科担当医とご相談ください。
なお他院からの照射依頼などの患者様におかれましては、それぞれの病院の主治医と御相談の上、紹介状(診療情報提供書)をお持ちになり御受診下さいです。
紹介状の他に、手術記録・病理レポート・直近の検査結果のコピー、キーフィルムなどを御持参いただければ幸いです。
ご予約は0467-88-5233に御願いします。
診察は月・火・水・金に行っています。
茅ヶ崎徳洲会総合病院 放射線科治療部長 加藤 雅宏
非常勤 永野 尚登(東京西徳洲会病院)







