「お腹を切らない腹腔鏡手術だから日帰りが可能に!」
欧米ではポピュラーな病気
「胆のう結石症」 (以下「胆石症」) は,その名の通り「胆のうの中にできた石」のことをいいますが,大変ポピュラーな病気です.欧米では10人に1人は持っているといわれていて,これらの約 3割の方が手術になっているといわれています.逆に言うと約7割の方が,胆石を持ったままお亡くなりになってるいうことになり,必ずしも手術をしなければならないわけではありません.
胆のう結石症のできやすい人できにくい人
胆石のできやすい方は,太っている (Fatty) ,40-50歳代 (Forty-Fifty) ,女性 (Female) ,たくさんお産をされた方 (Fertile) ,(白人 (Fair) )などと英語の頭文字をとって4F (5F) などといわれていて,日本でも,できやすい石の種類が若干異なり完全には当てはまりませんが,大方同様なようです.

胆のうと胆汁(たんじゅう)
なぜ胆石ができるのかを簡単に説明しましょう.ただそのためには,少々解剖や生理学について学んで頂かなければなりません.
まず,主役は「胆汁 (たんじゅう) 」という汁になります.これの特徴ですが,次のようなことがあげられます.
- 肝臓 (かんぞう) がつくる汁です (注意:胆のうが作るものではありません)
- 黄褐色で便(うんち)の色のもとになります
- 脂肪吸収のお手伝いをします
- 非常に苦いです(臥薪嘗胆)

胆のうは,まさに茄子のよう大きさ・形なのですが,図のように肝臓の下にペタっと貼りつていて,よく見ると肝臓と十二指腸をつなぐ胆管 (たんかん) という管の真ん中あたりから出た枝にできた袋となっています.
胆のうの仕事と胆石
胆のうの仕事はといいますと,胆汁を濃縮して蓄えて,必要に応じてそれを排出して脂肪吸収のお手伝いをよりよくすることです.つまり、胆のうはなくなっても,脂肪食に対して若干下痢しやすくなる場合がありますが,それほど困ることはないのです.
その胆のうの中に溜まっている胆汁中のコレステロールが多かったり,更年期などでホルモンバランスがみだれたり,肥満や妊娠などの影響でお腹の圧力が高いため完全な排出ができなくて泥のような溜まりができたりで,胆のうの中に石が形成されることがあります.その正体こそが「胆石」なのです.
ほとんどの胆石は悪さをしませんが,悪さをするとやっかいです.
ちょうどラムネの瓶の中のビー玉を想像してください.石ですから胆のうの中をコロコロと動くわけですが,これが出口のところにはまってしまったらどうでしょう.胆のうが収縮して濃い胆汁を排出するメカニズムは自律神経に操られています.ですから,みなさんが胆のうをつぶしたくてもつぶれませんし,つぶしたくなくても勝手につぶれます.出口に石がはまっていることも知らずに,天ぷらなどの油物を食べたらどうなるでしょう.自律神経の命令で胆のうはつぶれようとしますが,残念ながら中身を排出できません.しかし,そんなことお構いなしに胆のうはつぶれようとしますので,胆のうの皮がひっぱられて転げ回るような痛みが起こるのです.
その痛みの程度も様々で,少し右のあばらの下あたりがずーんと重い感じがするものから,脂汗をかいてのたうちまわるほどのものまであります.背中や右肩が痛くなることもよくあります (神経の通り道が一緒のため).こじらせると,胆のうの中に溜まっている胆汁が入れ替わらないためバイ菌が繁殖して熱が出てきます.これを「急性胆のう炎」といいます.
さらに石が胆管の方に落ちるとすべての胆汁の通過障害が出るために「胆管炎」となり,行き場のなくなった胆汁が血液にしみ出し,体中が胆汁色になる「黄疸(おうだん)」となってしまいます.
以上のようなことが起こってしまったら治療をしなければなりません.
胆石の診断
「胆石」を診断するには,いろんな検査は必要ありません.腹部超音波検査 (いわゆるエコー) だけで95%診断がつきます.採血やMRIなどの他の検査は,重症度の評価や手術をするための準備あるいは他の病気じゃないことを確認するために必要になります.
胆のう結石症の治療
それではいよいよ治療についてお話しします.
先に言ったような「腹痛」などの症状がある場合には原則的に手術をすすめます.(症候性胆石症)
では,症状がない胆石 (無症候性胆石症) は手術をしなくてよいかというとそうではなく,一般的には以下の場合に手術がすすめられています.
- 石が大きい場合 (2cm以上) ,あるいは石で充満している場合
- 胆のうの機能が消失している場合 (陶磁様胆のう)
- 胆のう癌が疑わしい場合
他にも,若くて元気で手術のリスクが少ない人や糖尿病を患っている人にもすすめることがあります.
手術以外の治療法もありますのでご紹介しておきましょう.
- 結石溶解療法
「胆石を飲み薬で溶かしてしまいましょう」(結石溶解療法) という治療方法です.欧米では15%ほどの方に行われ,その約半分の方に2年ほどで効果が出るという成績です.しかし,日本人に多いタイプの石は溶けにくく,かりに2年越しに溶けたことが確認できても薬をやめたらまた再発してしまいます.残念ながら日本ではほとんどやられておりません.手術に対して危険性が高い患者さんに仕方なく用いられるのをよく見かけます. - ESWL(体外衝撃波腎結石破砕装置)
これは「衝撃波で破砕してしまいましょう」という治療方法です.これはよく「腎臓結石・尿管結石」に使われる治療です.これを胆石に使うというのです.結石溶解療法と一緒に行うのが基本です.しかし,砕かれて小さくなった石は,尿路の結石では膀胱から「おしっこ」に出て行ってくれるのですが,胆石ではそうは行かない場合があります.胆のうから総胆管 (そうたんかん)に落ちた石を「総胆管結石」と呼びますが,それが総胆管と十二指腸のつなぎ目のところ (十二指腸乳頭) にひっかかってしまうのです.砕かれたビー玉がまた別のところをつまらせてしまうことになるのです.胆のうの出口にはまっても「胆のう炎」程度ですみましたが,総胆管の出口にはまると恐ろしい「急性胆管炎」になり,行き場のなくなった胆汁は血液に逆流して「黄疸」となってしまいます.ですからESWLも特殊な場合を除いて行われません.もしも「総胆管結石」がある場合には,胃カメラを用いて逆に十二指腸乳頭側から石をひっぱり出すことがあります (内視鏡的逆行性胆道造影・採石術:ERC).
よって究極の「胆石症」の治療方法はやはり手術になるわけです.
- 手術
「胆のうをまるごと取ってしまいましょう」(胆のう摘出術) という治療方法です.「えっ?胆のうを取っちゃうんですか?」「石だけ取るんじゃないんですか?」という声が聞こえて来そうですが,よーく考えてみてください.一度,胆石ができてしまうような胆のうですから,かりに石だけ取ったとしてもまたできてしまいます.胆のう癌の発生の問題もありますので,胆のうをまるごと取ってしまう必要があるのです.
そこでみなさんの気になる手術の方法の問題が出てきます.
いわゆる「お腹を切る開腹手術 (かいふくしゅじゅつ) 」と「お腹に穴を開けるだけでやる腹腔鏡手術 (ふっくうきょうしゅじゅつ) 」です.
| 開腹手術 | 腹腔鏡手術 | |
|---|---|---|
| 傷 (きず) | 大きくて目立つ (15-20cm) | 小さくてきれい (0.5-1cm) |
| 痛み | とても痛い | ほとんど痛くない |
| 食事 | 3-4日してお腹が動いてから | 手術後すぐ2-3時間で食べられます |
| 入院 | 日帰り無理(10日-2週間) | 日帰りできる |
| 図 | ![]() |
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以上のように,腹腔鏡手術は患者さんに大変負担の少ない手術であることがわかります.腹腔鏡手術には,一部に賛否両論とところがありますが,こと「腹腔鏡下胆嚢摘出術」に関しては歴史が古く(世界では1987年,日本では1990年ごろより開始) ,すでにもう安全性が確認されていますので心配はいりません.
ただ腹腔鏡手術に不向きの場合がありますので,これはご理解ください.
- 心臓や肺の機能が極端に悪い人 (お腹を膨らますことができないのです)
- 肝硬変などで血が固まりにくい人 (出血が止められないことがあるので)
- 妊娠中の人
- お腹に水がたまっている人
- 上の方のお腹の手術をしたことがある人 (胃潰瘍や胃癌の手術など)
- 乳幼児
- 著しい肥満の人
- 「総胆管結石」のような胆のう以外に石がある人 (胆のうをとっても解決しない)
- 癒着がひどい場合 (お腹の中をのぞいてみないとわからないことが多いです)
以上のような問題があっても場合によっては「腹腔鏡手術」ができる方はいらっしゃいますので,それは担当の先生とご相談してください.









