それではここで「日帰り手術」が行われる主な疾患の説明しましょう.そこにはなぜいままでできなかった日帰りができるようになったかについても触れてみます.
「メッシュを使うテンションフリーな手術だから日帰りが可能に!」
「どうせ手術するなら,今注目のクーゲル法で!」
ヘルニアは脱出の意味
そもそも「ヘルニア」と言いましても,「脱腸」と異名を持つ「そけいヘルニア」から,よく「腰痛」で耳にする「椎間板ヘル ニア」,はたまた「脳ヘルニア」という命に関わる病気までいろいろあります.もともとはラテン語で「脱出」を意味しますので,ひとことで「ヘルニア」と 言ってもいろいろあるわけです.
さて今回お話しする「そけい(鼠径)ヘルニア」ですが,子供の病気というイメージが強いようですが,むしろ大人に多い,治療法に必ず手術が必要となる代表的 な病気であります.かなりメジャーな病気と言えるでしょう.今後医療はますます進歩していくわけですが,医師の間での冗談で「脱腸と痔がある限り外科医は 食いっぱぐれることはないでしょう」とまで言われています.しかし,これまでは入院の煩わしさや手術の痛さなどから治療を敬遠し,放置したままの人も多かったようです.ところがつい最近,某テレビ番組で「本当は怖いそけいヘルニア」なんて放送をやったものですから,突如として治療を希望される患者さんが 急増しまして,本当にテレビの威力はすごいものだと思い知らされました.そんな中で,患者さんの身体への負担が少なく,効率的な日帰り手術を行う当院の治療が注目を浴びているのです.
そけいヘルニアの症状と原因

「そけいヘルニア」は,昔から「脱腸」とも呼ばれ,本来,閉じられているはずの鼠径管(そけいかん:ももの付け根)というトンネルを通って,腸などの臓器が出てくる病気であります(腸があまっているわけではありません!).大人では50-60歳代に多く,男女共に見られますが,身体の構造から男性に多発しています.はっきりした原因はいまだ確定していませんが,これまでは腹圧が高くなるためなどと言われておりました.今では何らかの原因で,組織そのものが弱くなってくるためと考えられています.
そけいヘルニアの治療法
治療法はそのトンネルの出口を塞ぐわけですが(腸を取るのではありません!),その方法としてつい最近まで,ほぼ百年前と同じような手法が行われていました.自分の組織を引っ張りながら縫い合わせ,中から腸が飛び出さないようにするという手法です(筋肉と靱帯を合わせる).この方法だと,弱くなっている組織を再び使って修復するため,再発率がどうしても高くなります.しかも,自分の組織どうしを引っ張って縫い合わせるため,治療自体に痛みが生じてしまいます.
そこで,人工的な補強手段が検討されるようになり,具体的には,身体に影響のない合成樹脂製のメッシュ(網)を患部にあてがい固定する方法が行われるようになったのです.弱くなった組織自体を使うわけではありませんから,長期にわって患部が補強されることになったわけです.再発率も,これまでの手術が10%強なのに対して,1%以下と格段と低くなっています.また手術では,患部の組織を引っ張るようなことはないので,引きつった痛さも起こらない,いわゆるテンションフリーの手術となったのです.

そして,さらにそのメッシュを内側から当てて補強しようと考案されたのが,今話題の治療「クーゲル法」であります.植木鉢がいい例でしょう.植木鉢の底に下からお皿をあてるのと,鉢の中に内蓋を落としたのとを比べて,植木鉢の中に水を入れた時に丈夫なのはどちらだと思われますか?おそらく皆さん,後者と思われたはずです.これがクーゲル法と同じ原理です.内側から形状記憶メッシュを幅広くあてるので,より丈夫になったのです.従来の外からメッシュをあてる方法(リヒテンシュタイン法)と比べてクーゲル法には他にも利点があります.

- 内側からあてるので補強がより強固で,術後早期に運動ができる
- 大腿ヘルニアという別のヘルニアも同時に治療できる
- 傷が小さく,術後の違和感も少ない.(メッシュが奥に隠れるため)
- もともとのそけい部の組織を壊さないで手術ができる.(裏の手術のため)
ただし,欠点もあります.実は,手術が従来のリヒテンシュタイン法よりも難しく習得するのに困難を要するのです.ですから,まだまだクーゲル法を敬遠している施設も多くあります.その点では当院は十分な症例を経験しこなしている数少ない病院でありますので,ご安心ください。
「そけいヘルニア」で悩んでいらっしゃる場合に,まず手術をやる・やらないの問題で迷うという時代はもう過ぎ去っています.今は,どこでどのような手術を受けるかということが重要な課題である時代になっているかと思われます.その点では,現在のところこのクーゲル法のできる施設でやってもらうのが最善と考えますが,いかがでしょうか?







